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梶井基次郎は、その生涯のうちで20篇の作品を残し、31歳の若さでこの世を去った文人です。東京帝国大学(現東京大学)在学時に著した「檸檬」にはじまり、生まれ故郷である大阪の地で、自身の絶えゆく生命を“視”つめつつ執筆した「のんきな患者」まで、約8年の間、宿痾に苛まれながらも生き、作品を書き続けました。
生時には文人として名を挙げることがかなわず、ままならぬ境遇にあった梶井ですが、そのうちでも最も幸福であった(であろう)時期を挙げるとするならば、伊豆市・湯ヶ島温泉郷で転地療養につとめ、川端康成や萩原朔太郎などの文人と厚誼を結び、かつ自然の中で己を見つめなおした約1年半の期間のことが真っ先に思い起こされます。
本著「梶井基次郎と湯ヶ島」は、その当時の梶井及び梶井の湯ヶ島の地での暮らしをあらゆる視座から取り上げた一冊です。湯ヶ島の自然や文物を材に取った作品や、定宿であった「湯川屋」関係者の当時の記憶を掘り起こした座談会記事のほか、第五版となる今回の版では、湯ヶ島の地に梶井基次郎文学碑が建立された際の記念誌(非売品)の内容を抄出して収録しております。
梶井研究者から梶井作品に興味のある方まで、いろいろな方に堪能いただける1冊になりました!
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